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  • 2020_02

みゅうのss保管庫 

ハーメルンで連載中のFate二次小説“黒桜ちゃんカムバック” 他二次創作・一次創作の保管庫です。


SS目次

  1. 2020/02/24(月) 22:15:01|
  2. SS目次
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  4. | コメント:0
完結・改訂版連載中・Fate二次

「黒桜ちゃんカムバック」(ハーメルン)
カムバック タイトル

士郎が倒れ、凛も消えた。しかしライダーの機転により聖杯に汚染された桜は記憶をそのままに過去へと戻ることに。戻ってみれば約10年前の第4次聖杯戦争の直前。自身は既に蟲の中、衛宮士郎はまだ存在しない。狂気に堕ちた桜は聖杯を手に入れるためにあらゆる手段を行使していく。

※Fate/stay night HFルート セイバーBADENDからのIF 
※愉悦、快楽、狂気で満載
※無事完結致しました。現在改稿に着手中です。
※改訂版のみArcadiaでも掲載
※改訂版から読むのが推奨。雰囲気が合えば未改訂版もどうぞ。


未改訂版
#1  desire
#2  ジャプニカ暗殺帳
#3  先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩
#4  わたしだけの味方
#5  敵は誰?
#6  ■■■■への想い
#7  喰い違う思惑
#8  無力
#9  胎動する狂気
#10 ヒーロー
#11 興
#12 脅迫
#13 慟哭
#14 第二の主
#15 喪失者
#16 暗転
#17 動き出す影
#18 血戦
#Last Episode カムバック

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改訂版

ソラウ_0001


♯1 Last desire
♯2 Meet again
♯3 Plot
♯4 Dropout
♯5 Heroes
♯6 Hunting
♯7 Fiance
♯8 Dear sister
♯9 Repeat
♯10 Lord  
♯11 Find out 
♯12  Oath sign 
♯13 Get back 

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凍結中・Fate二次
王の酒と自転車2号(Arcadia)

※逆行・IF・そして若干ネタものです。
※HFのtrueEDに“近い”世界のライダーが逆行します。
※凛の”うっかり”が10倍ほどに悪化しています。
※オリキャラ・オリサーヴァントは出てきません。ただし派生した別作品からは出てきます。
※登場時点から士郎は原作のどのルートの彼とも違います。かなり違います。ある人物の影響で別の可能性を辿って来た士郎です。
※召喚されるサーヴァントや組み合わせが異なります。第5次からだけではありません。
※多分トンデモ設定が出てきます。できるだけ基本設定から外れない範囲で頑張ります。
※大前提として第4次の結末からして違います。


第零話 お使いに行ってきます
第一話 お酒だけですって!!?
第二話 俺に力を貸してくれ!
第三話 この真名にかけて
第四話 ここは一献如何かな?
第五話 このつぶらな瞳を見て下さい
第六話 飛ばし過ぎだぁバカヤロぉおおお!!!
ステータス(最新話時点)


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凍結中・ネギま!×なのは(一部)二次


「魔砲少年サブカルネギま!」(Arcadia)

setuna.jpg


※オリ主とネギたちが序盤から全力全開で裏世界の問題(魔法世界救済を含む)解決に向け動く話です。オリ主の動きにより、多くのキャラの立ち位置や組織の勢力図が原作と乖離しています。

※「リリカルなのは」とのクロスですが、アニメがネギま!世界で放映されている設定です(放送年はご容赦を)。それを見た主人公やネギたち魔法使いの性格面、技術面への大きな影響があります。

※主人公及び式神はオリジナル能力がありますが、チートではなく悪い意味でのバグです。物語の核心部分を担うものなので少しずつ出していきます。

※主人公及び式神除き、メインにはオリキャラは極力出しません。しかし関西関係(各派閥、青山家、近衛家など)や魔法の解釈でオリジナル設定が多いです。

※政略・開発・日常・恋愛(非ハーレム・√固定)の話が主です。それと【覚醒編】より魔改造ネギとオリ主のダブル主人公ものになります。

※原作イベントが起こらない、オリジナルイベントの突発があります。




第1話  狐との契約【幼少編
第2話  「とくべつ」な式神【準備編】
第3話  改革派設立
第4話  変わらないものと変わったもの
第5話  学園長
第6話  墜ちる星光
第7話  重なる想い
第8話  領域を超えて
第9話  英雄の息子を巡って
第10話 大戦の予兆
第11話 母が遺したモノたち
第12話 図書館島の秘密
第13話 リリカルサブカル始まります【覚醒編】


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連載中オリジナル(現代恋愛もの)

「バトルラブをしませんか」(小説家になろう)

死後BLゲームの世界へと転生させられた青年。ゲームの世界としか知らされてない彼は想定外の路線で突き進む。彼を他の男子達と恋愛させようと画策する女神だったが、いつの間にか彼女自身が攻略されていた。そんな合法ショタと女神な腐女子のBL(バトルラブ)ゲーム。 ※BL(ボーイズラブ)要素はギャグで済む程度です。

第一話 ボーイズラブを知らない彼は
第ニ話 共通ルートを知らない彼は
第三話 同じクラスになった彼女は
第四話 世界を信じきれない彼は
第五話 テストなんてへっちゃらな彼は


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凍結中・オリジナル(現代恋愛もの)

「Gから始まる夏物語」(小説家になろう)

通称G、名前すら呼ぶことを憚られる生物に襲われていた所を助けたことから二人の恋は始まった。異なる価値観に触れて次第に変わっていく、自堕落な男女の物語。

第一話 襲来


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凍結中・オリジナル(ギャグ・異世界冒険もの)
「リンゴを求めて」(小説家になろう)

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異世界で助けてくれたのは、旅の料理人たち。しかし彼女達はグルメ界で悪名高いフォンタイル・アカデミー元料理部メンバーだった。凶悪な美少女達に翻弄されながらも、世界の平和のため暗黒レシピ集普及を阻止する話。

第1話 始まりは暗黒料理
第2話 加害者たちの焦想 
第3話 被害者の困惑
第4話 リンゴを巡って
第5話 血濡れの契約

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♯13 Get back

  1. 2014/09/02(火) 22:44:23|
  2. 黒桜ちゃんカムバック (完結&改訂版連載中)
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 聖杯の器を無事に確保。ランサーと先輩の2騎も無事で魔力の損耗も少ない。わたし達の陣営は非常に理想的な状況のはずだったのだが、想定より遥かに早く“その時期”が訪れたようだった。

「間桐桜。聖杯の扱いよりも先に色々と話すことがあるようだな」

 そう言った後、残り少ない紅茶を飲み干したケイネスさん。ソーサーにカップを戻す動作は音一つしないぐらい丁寧であったが、それが逆に居心地が悪い。突き刺さるような目線のおまけもついているのだから尚更だ。
 その矛先であるわたし自身はというと、お行儀悪く紅茶に上唇をパクパクと浸しながら、次の言葉を発するまでの時間を稼いでいる。先輩の真似をせず、素直に砂糖を入れれば良かったと後悔した。淹れ方も最高、発酵も浅いものだったのに、ダージリンの渋みばかりが口内に染み込んでいく。

「そうね。私も同感だわ」

 少し前まで甘えさせてもらっていたソラウさんも、今回は言い逃れを許してくれそうにはない。言葉を発そうとしても言い淀むわたしと、合流後からずっと顔色が悪くお茶に口を付けさえしない雁夜おじさん。そんな状況を察して、代わりに先輩が口を開いた。

「桜、雁夜、ここは私から話そう。全てを--だ」

 先輩がそう判断したのならわたしに異論はない。わたしに続いて雁夜おじさんも首を縦に振る。

「話すべき事は多いが、全てを明かすつもりだ。今まで話せなかった理由も、君達を頼った理由も自ずとわかるだろう。だから落ち着いて聞いて欲しい」

 ぶれることなく刻まれる秒針、それより少し速いわたしの鼓動、そして誰かの固唾を呑む音。

「先ずは我が真名を明かそう。私の名は衛宮士郎。“魔術師殺し”衛宮切嗣の息子。そしてここから先の未来、守護者に至ることを定められた英霊だ」

 ソラウさんは首を横に傾け、ケイネスさんは小さな舌打ちを一つだけ。隣のランサーに至っては動じる様子を微塵も見せない。周りの反応が小さいことにこちらが驚いたぐらいだ。拍子抜けして開きそうだった口元をしっかりと結ぶ。

「……息子? ……未来? 第五次ってそんな訳がっ! イリヤは、キリツグはどうなったの!?」

 そして一番動揺しているのは本来部外者のはずの、両手両足を椅子に拘束された彼女だった。半ば茫然としているのか、唇を震わせながら言葉を発している。対する先輩は一瞥だけ。あくまでも感情を押し殺して答えていくつもりなのだろう。

「アイリスフィール、その問いに答える前に、私の知る第四次の結末を話そう」
「結末――――そうか大前提として“貴様ら”は知っているのだな」

 ケイネスさんの目線が再び先輩からわたしへ。

「ばれてるみたいだね」
「完全にばれてますね」

 ヒントは少なかったハズなのに、どうして其処に至ることができるのか。凡才のわたしには不思議でならない。雁夜おじさんもきっと同じ気持ちだろう。
 そんなケイネスさんが優勝できなかったのはやはりランサーの火力不足だったのだろうか。昼に短い模擬戦をしたが、あの先輩を素人目でも技量で圧倒していたと思う。しかも先輩と組む事が出来れば「本来の火力」も取り戻せるのだ。戦力的にも、戦後処理のことを考えても、この陣営との決裂だけは絶対に避けなければならない場面が今なのだ。頑張って下さい先輩。

「肯定だ。当時私は桜ぐらいの子供、しかも養子に行く前だったのでね。伝え聞いたことばかりで詳しいことは知らない。所々記憶の摩耗もあるようだが許してくれ。しかし、確実なのは衛宮切嗣は最後の方まで勝ち残ったということだ」
「流石キリツグ。当然ね」
「しかしだ」

 さも自らの事のように胸を張って誇る彼女に対し、先輩は更に一つ低いトーンで言葉の錆を打つ。肝心なのはここだろうと誰もが予感していたことだろう。言葉はなく、秒針の音さえも今は遠い。再び空気が揺らされたのは数瞬の後のことだった。

「何か、起こったの?」

 一息おいて先輩はその答えを告げる。

「街が炎に包まれた。煙に染められる風景と、命が焼ける匂い――それが私が思い出せる最初の記憶だ」
「最初と言うのは、つまり貴様は……」
「あぁ、私にはそれより以前の記憶がない。まぁ最も、守護者として永劫とも言える時を戦い続けた私には、生前の記憶はほとんどない様なものだがね。だがそれでも私にとっての“原風景”は決して忘れん」

 閉じられた瞼の裏側にはきっとそれ以上に凄惨な光景が焼きついているのだろう。先輩が背にしているその窓の向こう側。静かに寝息を立てているこの街の景色も、このままいけば全て灰に変わってしまう。
 蟲蔵に閉じ込められていた当時の私が知ることは少ないけれど、その戦禍の跡はお爺様に連れられてこの目で見た。
 あんな風にしてはダメだ。この街のどこかに居るはずのもう一人の先輩は絶対に巻き込まない。正義の味方になる道から救い出して、わたし達と幸せになるんだ。そう固く決意して、拳とも呼べないぐらい小さな指先をぎゅっと握りこむ。
 窓の向こうから先輩に視線を戻すと、自然と目が合う。軽く頷いた先輩はその先の言葉を続けた。

「第四次聖杯戦争当時の私は今の桜と変わらない歳の子供だった。聖杯戦争による大火災で全てが燃え尽きたが、私は衛宮切嗣に助け出され養子として生きることになった。これが私と第四次聖杯戦争の因縁だ」
「キリツグが、貴方を……そうだったのね。他の人には関係ない話だけど、一つだけ聞いて良い?」
「記憶にある限りのことは答えよう」
「キリツグとイリヤ、二人は幸せになれたのかしら?」
「あぁ、それならば自信を持って答えよう。二人とも最期は満足そうな笑顔だったよ」
「……そう、それならいいわ」

 深紅の瞳を潤ませながら彼女は呟いた。そしてしばらく沈黙を保っていたケイネスさんが前に出る。ここからが正念場だろう。

「もうその女はいいな。衛宮士郎、いくつか質問がある」
「続けてくれ」
「その大火災の原因は“貴様の知る第四次聖杯戦争”の勝者によるものなのだな?」

 誰が勝者かと聞かない辺り、ケイネスさんは既に目星がついているのだろうか。そんな疑問がふとよぎるが、マスターを消去法で可能性を絞っていくと、そう答えは多くないということに気付く。例えば典型的な魔術師であるお父様やケイネスさんが街を焼き払うなんて“神秘の漏えい”に関わらない限りは行わないだろう。行ったとしても小規模なはず。キャスターのマスターが生き残れるとは思えないし、ライダーのマスターにそんな根性はない。ならば行きつく答えは――

「おそらくは言峰綺礼。奴は他人の不幸を糧にして生きる様な男だ。私も生前散々辛苦を舐めさせられたからな」
「その男の事はよく知らんがやはりそうか」

 わかっているとの前提で交わされる会話。ソラウさん、ランサーさんは付いていけているのだろうか。これからもっと情報が溢れて来るのだけれども……

「次は間桐桜、君に答えてもらおう」
「えぇ、偽りなく答えましょう」

 そんな事を考えていると、とうとう出番が来た。心の準備はもう出来ている。

「何故この男を召喚できた?」
「わたしが第五次聖杯戦争を勝ち抜いたマスターで、恋人である先輩を英霊にしないために過去に遡ってきたからです」
「捕捉するならば私の英霊としての願いは、英霊エミヤシロウを誕生させないために平穏に聖杯戦争を終結させることだ。私と縁を持ち、同じ願いを抱いた桜に呼ばれたのはもはや必然だろう」 

 目を丸くして言葉を失う面々。他の陣営、いや世界中のどこにも絶対漏らせない情報がここにはあるのだ。

「時を遡り、過去に介入する――まさに魔法のような奇跡。聖杯の力でもないと不可能なことね」
「見た目からかけ離れた精神年齢と強大な魔力。第五次の勝者と言うのならば整合性はある。色々と情報を伏せていたこともな」

 ソラウさんに続けてケイネスさんもようやく納得したというような口ぶりだ。しかし最初に出会ったときのように警戒心を抱かれているのは確かだ。向けられる言葉の切っ先は未だに鋭い。

「聖杯戦争に我々が勝利することで大火災を防ぎ、英霊エミヤシロウの誕生を阻止する。そして間桐の家を潰し、聖杯戦争による名声を得た私の庇護下に入ること。本当の目的はこれに相違ないな?」
「ありません。それがわたしの全てです」

 はっきりと断言する。姉さんを、先輩をあの世界で失い、この世界でも姉さんを既に失った。お父様やお母様が今後どうなるかも分からない。それでも、それだからこそ、わたしは絶対に道を違えない。先輩を手に入れて、正義の味方への運命からも、お爺様の手からも絶対に逃げ切って見せる。

「そのためになら何でもします。だからどうか力を貸して下さい。お願いします!」
「俺からも頼む。桜ちゃんが言っていることは本当だ」

 喫茶店の時と同じように雁夜おじさんが三人に頭を下げた。それに合わせてわたしも深くお辞儀をする。

「俺は本来間桐の捨て駒にされて無様に野たれ死ぬ運命だった。でも桜ちゃんのおかげで俺は無事だし、最終盤まで残るはずだったセイバーも最初に始末できた。もう未来は変わっているんだ。桜ちゃんの知識は本物だ」

 雁夜おじさんは両手を広げて声を張った。そして右拳を向けてガッツポーズを取って一言。

「それになにより士郎は強い。あの狙撃も、ランサーとの模擬戦も見ただろう? 俺達のセイヴァーは最強なんだ!」

 唾が飛ぶほどの熱弁に心を打たれたのか、ランサーが助け船を出した。

「主よ。俺からも進言します。サクラの覚悟はこの目で見ました。それに万が一マスターたちに危害を為すことがあれば俺が排除します。双剣については誰よりも知り尽くしている自負がある。この男に万に一つも負ける要素はありません。我がゲッシュに誓っても良い」

 姉さんとの別れを見られたことが後押しになっているのか。この場で味方してくれるのは非常にありがたい。
 そう言えばゲッシュで女性からの命令には逆らえないんだっけ。その割にはソラウさんのお願いを袖にしている気がするけれど。

「ケイネス。私からもお願いするわ」
「ソラウ、それはランサーが――」
「違う。何でも叶えられる聖杯の願いを使ってまで恋人の運命を変えようとしているのよ。私は魔術師である前に一人の女として彼女に協力してあげたい。私も今日サクラちゃんの覚悟しっかりと見た。それでも前を向いて語れる彼女にきっと裏はないわ。私はそう信じたいし、貴方にも信じて欲しい」
「しかしソラウ――、いや分かった。信じよう」

 そして遂に折れた。100%の信頼ではないがそれでもいい。これから少しずつ足りない分を積み上げればいいのだから。

「私からも感謝する。だから信頼の証を預けたいと思う」

 軽く礼をした先輩はケイネスさんの方ではなく、拘束されている彼女の前に立つ。そしてその鎖骨部分に手を伸ばす。

「な、何するのシロウ!?」
「え、先輩!?」
「落ち着け。桜もだ」

 珍しい呆れ声で先輩は言う。変な事はしない、と信じたい。でも先輩だし義理の母親とはいえど少しの不安はあるのが本音だ。

「トレース・オン」

 そんな私の心境を余所に、瞳を閉じて集中する先輩。

「全て遠き理想郷」

 先輩がその真名を唱えると、光の粒子が密度を増し段々と実体を成していく。そして現れたのは黄金に煌めく一つの鞘だった。これは今までの投影とは少し違う。

「ど、どうしてそれを!?」
「アイリスフィール、私はこの鞘の力によって切嗣から救われたのでね。先程身体の様子を確かめたときに其処にあると気付いたのだよ」
 
 真昼の太陽のように部屋中を照らすその鞘を手に取った先輩は、ケイネスさんに迷うことなく差し出した。

「全て遠き理想郷――5つの魔法さえも寄せ付けない評価規格外の宝具だ。本来の担い手である騎士王がいなければその効果は微々たるものでしかないが、ソラウに渡しておくといいだろう」
「この魔力、間違いなく本物だな。その申し出、ソラウ君はどうする?」
「これを、私が? 魅力的だけれども丁重にお断りするわ。恐れ多いというか、何と言うか。気持ちだけで十分よ」

 現存する宝具、しかも評価規格外。そんな物をポンと渡されて「はい頂きます!」とは中々言えないだろう。完全に顔が引き吊っていた。

「だったら士郎、その鞘、俺に貸してくれないか?」

 そう言ったのは雁夜おじさん。

「これがあれば臓硯を、時臣を、もしかしたら出し抜けるかもしれない」
「急にどうしたんですか、おじさん?」
「ついさっきまで時臣と臓硯と接触していたんだ。そして時臣に俺が魔術師じゃないとばれた」

 よく無事で、としか言えないぐらいの衝撃の真実が飛び出て来る。さっきまでおじさんは一人だったはずなのに。

「時臣は俺の事を一般人だと見くびっている。妙に動かなさすぎる爺ぃもだ。警戒されている桜ちゃんと違って、俺になら付け入る隙はある。やっと俺にも覚悟はできたよ。士郎、あの二本のナイフを投影して、鞘と一緒に貸してくれ。あれなら俺にも使えるんだろう?」
「君の事だ。止めてもきっと止まらないのだろうな。わかった」

 わたしを一瞥した後、雁夜おじさんの胸に鞘を押し当てる。すると、鞘が体内に溶け込むようにしておじさんの身体の中に収まった。
 柄の先に紅い宝玉がついた短剣と、稲妻を象ったような歪な刃を持つ短剣をそれぞれ投影する先輩。

「使い方はもう知っているな? 刀身は布で巻いておくと良いだろう」
「ありがとう士郎。さっき俺は何もできなかった。やっぱり俺一人無力なままじゃダメなんだ」

 笑顔で受け取るおじさんだったが、そのやりとりを見ていたケイネスさんとソラウさんの様子がまたもやおかしい。具体的に言えば口が開いたままだ。

「そ、それって投影なの?」
「あぁそうだ。生前は魔術師だったからな。投影した宝具を使っての狙撃と剣戟。それが私の能力だ」
「そんな馬鹿な。宝具を投影だとっ!? 規格外にも程がある。だが、それより他に何が投影できるかだ。あの弓と双剣、それ以外には何がある? ライダーとアーチャーの対策が大きく変わるぞ」

 現実に戻ってきたケイネスさんは怒涛のスピードで言葉を浴びせる。

「任せておけ。君たちが最も求めているモノを私ならば用意できる」
「セイヴァー、もしやそれは!?」
「ランサー、君と私は敵同士ならば最悪だったが、お互い味方で良かった。我々は最高の相性だったらしい」

 不敵に先輩は笑う。その言葉の意味を理解したのかランサーの口元も緩んだ。

「セイヴァー、いやシロウと呼ばせてくれ」

 先程、先輩から渡された新たな力を天に掲げ、ランサーは告げる。

「もう我々に敵はない。必ずや勝利を主に捧げ、サクラを幸せにすると誓おう!」 

 

              ×          ×




 次の夜。今回狙うは遠坂邸。どうもこちらの事情を気付いている節のあるライダー陣営も危険であるが、やはり最大戦力であるアーチャーが優先だ。魔力の損耗がない内に叩いておきたいという思惑がある。
 それが起こったのは、入念に準備を済ませ、アジトの1つであるマンションからいざ出発というところだった。
 眠る街の静寂を粉々に砕いたのは突然の轟音。そして世界が揺れた。地震の如く、足元から全てが震えている。

「なんだこれっ、爆発!?」

 窓辺にかけ寄った雁夜おじさんが外を確認する。わたしもそれに付いて行く。すると信じられない光景が遠目にだが確認できた。

「ソ、ソラウさん! ハイアットホテルが崩れてます、これって!!」
「嘘っ! 私達の部屋がっ!!」

 まるでハリウッド映画のようなシーンが目の前にあるのだ。口を抑えながらも金切り声を上げるソラウさん。信じられないのも仕方がない。しかし、ケイネスさんの方が取り乱し方が異常だった。

「はははっ、そんなっ。フロアごと貸し切った工房が……結界二十四層、魔力炉三機、猟犬代わりの悪霊、魍魎数十体、無数のトラップ、廊下は一部異界化させて――」

 瞳からは光が消えうせ、死人のような目をしている。早口言葉の様な、呪文の様な何かを呟いているが発狂と言っても過言ではない状態だろう。

「気をしっかりと、主よ! おそらく敵の狙いは――来ます!!」
「桜、雁夜っ!!」
「Fervor,mei sanguis!」

 光と共に目の前が弾け飛んだ。わたしの身体はおじさんと共に先輩に抱えられ三人まとめて衝撃波に吹き飛ばされる。
 窓から飛び込んできた戦車がわたし達の居たリビングを粉々に蹂躙していた。ライダーだ。この展開は全く予想していなかった。まさかライダー達にこの場所がばれるなんて、誰が考えようか。

「大丈夫か、桜?」
「はい、問題ありません。ケイネスさん達も無事な様ですね」

 水銀の壁でソラウさんをケイネスさんは凄い。ランサーもしっかり聖杯の器である彼女を椅子ごと確保していた。

「やはりこの程度は避けるか」
「ライダー、御託は良いから。すぐに始めるんだ」

 ライダーが土足で戦車から降り立った。その巨漢に似合わない小さな短剣を構える。次に降りてきたマスターも土足だ。
 人の家を壊して、土足で上がり込むなんて許さない。絶対に許さない。哀れなぐらい戦い慣れていないマスターだったので、なるべく穏便に済ませようという考えがあったが、もうこの時点で問答無用のゴミ箱行きだ。
 そして戦車から降りて来るもう一つの人影、土足でその男も絨毯を汚した。許せない。そしてその男は面を上げた。

「遅くなったね。助けに来たよ、アイリ」
「キリツグ!」

 驚きよりも納得の方が先だった。このマンションがばれたのはあの冴えない男のせいらしい。禍根はここで断つ。先輩の話で出ていた砂漠の固有結界を使われては厄介だ。機動力を生かせないこの場所で敵を完全に潰す。

「先輩、ライダーを!」

 叫ぶ声に合わせて先輩は飛び出した。しかしその剣戟はいつの間にか現れた一人の騎士によって阻まれる。

「このミトリネス、王の一人として馳せ参じる!」
「不味い。ランサー、ライダーを止め――」
「させるかっ!!」

 ケイネスさんが指示を出し、ランサーが動き出そうとした刹那、再び部屋に鮮烈な光が刻み込まれる。衛宮切嗣の手から放たれたのは閃光弾か。やられた、多分ランサーの足も止まっている。視力が回復する前に、悪化していく状況を確信する言葉が耳に入った。

「――さぁ集え、我が同朋よっ!!」

 部屋の書類が、カーテンの切れ端が、フローリングの破片がエーテルの嵐に巻き込まれる。そして塗り変わっていく風景、噂に聞いていた熱砂の海の真ん中に、わたし達は立たされていた。

「最悪の事態になってしまったようだな、桜」
「まさか、向こうも同じ手を使って来るなんて思いませんでした」

 先輩の言う最悪の事態とは、奥に見える万の軍勢のことではない。味方だって怪我ひとつない状況だ。しかし――

「どこにも居ないな。爺さんに分断されたか」

 鷹の目を持つ先輩が言うのだから間違いない。衛宮切嗣とアイリスフィールがこの世界から消えていた。

♯12  Oath sign

  1. 2014/09/02(火) 22:43:37|
  2. 黒桜ちゃんカムバック (完結&改訂版連載中)
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 瞬きを一つ、二つ。そしてゆっくりと三つめを刻んだ後、目を大きく見開く切嗣。
 理不尽な怒号を向けられているのは他ならぬ自身らしいと彼はようやく理解した。肩を震わせながら対峙する少年は、その視線を切嗣から“しろう”へと移し、眉間に刻んだ皺を更に深くする。

「――――シロウ、か。あぁ、もう畜生! そういうことかよ。だから」
「おい坊主、急にどうした?」
「どうしたも、こうしたもっ!」

 宥めるライダーへヒステリー気味へと噛みつく少年は、ライダーのマスター。名はウェイバー・ベルベットだったかと切嗣は記憶を巡らせる。

「しってるひと?」

 幼いとはいえ、向けられた理不尽な敵意は察しているのだろう。瞼をせわしなく擦る彼は切嗣へと身を寄せながら問いかける。

「……少しだけね」

 小さな肩を抱きとめながら切嗣は答えた。無論データ上でなら知っている。だが直接の面識はなかった。少なくとも向こうは衛宮切嗣が聖杯戦争に関わっていること自体知っているはずもない。下手をすれば「魔術師殺し」の名さえ知らない様な素人魔術師だったはずだ。ならば初見で「アンタ」呼ばわりされるような原因は、彼女しか思い当たらない。

「貴様が衛宮切嗣で相違ないな?」
「あぁそうだ。アイリが世話になったみたいだな。こちらも色々あって迎えに行けなかった。すま――」
「そこの子供のせいだよな」

 謝罪を遮り、少年は俯き加減で呟いた。

「どんな思いでアイリスフィールがアンタを待っていたと思っているんだ。なのに、当の本人は隠し子と遊んでいるなんて。どこまで裏切れば気が済むん――」
「ちょ、ちょっと待ってくれ! 隠し子だなんて誤解だ!」

 思わぬ批難の口上に慌てた切嗣の方が今度は口を挟む。傍から見れば確かにそう見えない方がおかしい状況だ。舞弥との不倫という形でアイリスフィールを裏切っていたのは事実だからだ。しかしその不倫さえも、やがて訪れる決別の時のための予行演習であり、決して本心から望んだ行為ではない。ましてや隠し子を儲けるだけの心の余裕など、切嗣は持ち合わせていなかった。

「妾を囲うのは漢の甲斐性ではないか。そんなことで気を立てんでも」
「時代が違えば倫理観も違うんだよ。ややこしいからオマエは黙っててくれ!」

 少年はライダーの弁を金切り声で封殺する。理性よりも感情が先走っているのを必死で彼も押さえようとしているのが切嗣の眼にも見て取れた。切嗣も落ち着いて話そうと一つ深呼吸をした後に再び口を開いた。

「この子と僕は何の血の繋がりもない。偶々バーサーカーの魂食いに巻き込まれていたところに遭遇して保護しただけだ。事後処理のために駆け付けて来た教会に、預け次第すぐにそちらとコンタクトをとる予定だったが」
「こう言っておるが、坊主よ。勘違いだったということはないか?」

 切嗣の筋の通った弁を聞いたライダーは首を幾度か縦に振る。納得した彼はウェイバーを諌めようと切嗣を弁護しようと試みた。しかし当の本人は靴底で足元の雑草を捩じり切りながら、一つのキーワードを忌々しげに吐き出した。

「エミヤシロウ」

 この第四次聖杯戦争における最重要事項とも呼べるであろう言葉に対し、場に居る各々の反応は様々だった。しろうは首を傾げ、切嗣は眉をひそめ、ライダーは重力をなぞる方向に口元を弛緩させた。

「ライダー、覚えているだろう? アイツと同じ名を持つ子供が目の前に居る。それがどれだけの確率だと思う?」
「はははッ!もはやそれは偶然とは呼べん。必然であったか。だがそれなら、あの妙に見透かしたような態度も納得が行く」

 巨木の幹の様に厚く固い手が、少年の背中へと勢い良く叩き付けられる。

「おい、馬鹿! ったたたっ、止めろってば!」

 前へ転げそうになっている彼は制止を要請するが、すぐさまもう一つ、景気の良い音が追加された。

「よくぞ気が付いた。やはり我がマスターは優秀であったか。流石この時代で英霊に至れるだけあるな!」
「なな、なっ! オマエ……気付いてたのかよ。でも、オマエの臣下になってるとか色々と腑に落ちないところがありすぎて」
「余も今確信したところだがな。アレは貴様の可能性の1つに過ぎん。それ位に考えておけ。良くも悪くも、今の坊主は今の坊主だ」 
「……なんだかなぁ」

 突然糾弾されたかと思えば、切嗣には理解不能な会話を始め出した主従。必要足る情報を持っていない切嗣であったが、“しろう”と切嗣が先程の隠し子騒動と異なる形で問題となっており、その内容が盗聴対策の欠片もない状態で軽々しく話していい事でないことだけは確かだと考えた。更に言えば、この冴えない少年が英霊に至る可能性も眉唾ものだが、その考えに至った根拠が見えない。アイリスフィールの引き渡しについても話さなければならない以上ここに居るのは得策ではないはずだと切嗣は判断する。

「さっきから会話に付いていけないんだが、それは教会に聞かれてもいい内容なのか?」

 遂にに痺れを切らした切嗣が場所を一度変えないかと口を開き、ごくごく当然の提案に二人は無言で気まずそうに頷いた。



                   ×        ×
 


「ほう。この白いのは砂糖だったか。センベイの塩っ気が繊細な甘味を引きたてておるのか。悪くない」

 煎餅を豪快に齧る音が、早朝から重い空気を漂わせていたウェイバーの部屋に響く。そして、いそいそと次の包装を開けながらライダーは切嗣に質問を投げかけた。

「この時代、いや特にこの国の食文化は驚嘆することばかりだ。受肉した暁にはまずニホンの料理人を臣下に加えねばならんな。貴様、そういえばこの国の出身と言っておったな。腕利きの料理人を引き抜きたいのだが、どこか良い店は知らんか?」

 アイリスフィールの現状、大きく変わった勢力図、そして教会前で繰り広げられていた推論の詳細。押し寄せて来る情報の洪水に呑まれ、しばし無言であった切嗣もようやく口を開いた。 

「生憎とね。ボクはあまり食事には興味がないんだ」
「食に興味がないと……随分と損な生き方をして来たのだな」
「必要とされる栄養が取れればそれで十分だ。迅速ならなお良い」
 
 哀れむように目尻を下げるライダーに対し、溜息混じりで答える切嗣。両者のやりとりを聞いていたウェイバーも、彼に続けるように溜息を一つ。そんなウェイバーの頭を押さえ付ける様にしながらライダーは新たなプランを持ちかける。

「ではマスターよ。昼は景気づけを兼ねて街の有名店を一通り征服しに行くとするか」
「なんでそうなる!? どれだけ勝手にボクの財布を使うつもりなんだオマエは。昨日だって山ほどタコヤキを買ってきたばかりだろう!」

 ウェイバーは昨日の手痛い出費を思い出し、その細い左腕でライダーの手を跳ね除けながら憤慨してみせるがライダーは意に介さない。

「サーヴァントの腹を満たすのもマスターの甲斐性ではないか。タコヤキか、アイリも気に入っておったようだしな。うむ、あそこの店主をまずは臣下に――――」

 アイリの名に反応した二人が目に入り、途中で言葉を濁すライダー。気まずい沈黙を埋めようと、彼はそれぞれへとソレを投げて寄こした。

「ほれ、貴様らも食え。腹を空かせては頭が回らんだろう」
「あぁ、そうだな」
「ありがたく頂こう」

 切嗣は固く焼き上げられた煎餅を両手で割った。半月状になったソレを手に持つと、ゆっくりと奥へと押し込んでいく。いつも好んで食べているファーストフードとは違う。飲み込もうにも特有の固さがそれを許さないのだ。
 食べているときは無言でも間が持つ。助けられたと思った切嗣だったが、それは違った。彼の左手に残る半分の煎餅を与えるべき人物が今この場にいないのだ。無論その相手とは、下の階で老夫婦に世話になっている未来の養子らしき少年の事ではない。切嗣にとっての本来の家族の事だ。
 アイリは煎餅の味を知らない。クッキーとは違う食感に喜ぶであろう彼女の顔は容易に想像できるが、それを実現させることは容易ではない。
 ましてやイリヤに至っては煎餅やタコヤキはおろか、外の世界のことを何一つ体感することが許されていないのだ。アインツベルンとの約定を果たさねば、イリヤは一生籠の鳥のまま。それは父親として、彼女の母親であるアイリの夫として、決して許されないことだ。だが今の自分にはこの状況を打破できる力はない。

「……煎餅なんていつ振りだろうな」

 舌先の上に残るのは塩味の奥にある柔らかな甘み。それが消えきらないうちに、残りの半分も彼は口へと押し込む。
 救いようがないほどに致命的な失敗をしたし、さらなる失敗を知らぬ間に見逃しもした。独りよがりな思想よりも本当に大事なものを、セイバーが倒れた後には気付いていたはずなのに。なのに今のこの様はなんだと、切嗣は自らに対して憤る。
 まさかそんな事になっているなんて……切嗣は喉元まで出かかった言葉をグッと腹の底へと押しこめる。そんなこと無責任なを言っても状況は何一つ好転しないのだ。自己の怠惰により状況は刻々と悪化しているが、まだ取り返せる位置に居るという様に思いなおす。
 アイリを連れ去ったのはサーヴァント2騎を抱える上に、強力なマスターが“最低でも”二人いることが分かっている陣営だ。“切嗣と舞弥だけ”では状況を打開できる可能性は万に一つも残っていない。

「ボクはアイリスフイールへの義理を充分果たしたと思っている」

 ウェイバーは煎餅を先に食べ切っていたようで、唐突に彼は短い言葉を発した。

「残っている陣営で同盟を組んでいないのはボクたちだけだ。魔力の無駄遣いをできる状況じゃない」

 力を貸してくれと懇願する前に釘を刺された形である。ライダー自身は強力だがマスターであるウェイバー自身は非力だ。だが非力ではあるが、それが分からない程に彼は愚かな人間ではない。この手の人間を動かすには「本心」に従わせるための建前が必要だ。だからこそ建前として、切嗣は「とある情報」を提示した。

「あぁ理解しているとも。だから教えよう――――聖杯の使用には、アイリスフィールが有する技術が必要だ」

 これは魔術師同士の等価交換ではない。ただの騙し合いだ。決してアイリスフィール自身が聖杯であることを誰にも知られてはいけない。故に切嗣は巧みに嘘を言の葉に織り込む。幸い相手は御三家とは無関係かつ未熟な魔術師であり、隣の英霊も魔術に疎い。それを切り口にするしかないと切嗣は判断する。

「アインツベルンは他の陣営が聖杯を使えないように細工をしていたというわけだ。これなら例え敗退しても他の陣営の勝利もありえない。あの老害たちが考えそうなことだよ」
「その細工がある事を奴等は知っておったということか。それならば倉庫街での狙撃や、夜のことも説明が付く」
「僕は家族が無事ならばそれで良い。アイリスフィールを奪還する代わりに、聖杯の使用を補助しよう」
「アンタがそれで良いならこちらも願ったり叶ったりなんだが、どうにも……あだぁっつ!! 何するんだよオマエ!」

 歯切れの悪い言葉でライダーの顔色を伺うウェイバーに対し、デコピンで一発喝を入れた様だ。デコピンと言えども巨人とも言える体躯から繰り出される一撃である。相当な威力であることがみみず腫れの額から容易に想像ができる。

「坊主、何を迷っておる! 答えはもう自らの中にあるのだろう」
「言われなくても分かってる。情が移ったのは認めるよ。損得なしでもきっと動いていた」

 やけくそ気味に唾液混じりの声を飛ばす少年と、ますます笑みを深くする巨漢。裏表のないこの二人を眺めながら、彼らを味方にすることができた幸運に切嗣は感謝する。アイリスフィールの奪還後、この主従の目を潜って海外へと脱出。戦力を整え直して、イリヤの救出を行う。それ以外に道はない。

「きっとその細工の存在がアイツらにばれたから攫われたんだろう? なら行動を急がないと不味い」
「あぁ。動くなら今夜しかない。幸い別で動いている僕の部下がアイリの居場所を掴んでいるはずだ。手持ちの戦力をお互い確認して策を練ろう」
「策、と言ってもできることは余りなさそうだけどな。アンタが何らかの陽動をしている間にライダーが奇襲して奪い返すと共に離脱」
「それが一番案牌と言ったところか。でも一捻り必要だな」

 両者腕組みしながら首を捻るが余り建設的な案は“言葉に”出て来ない。

「ここはいっそ、ランサーの言う通り正々堂々と身柄を賭けて決闘するか……それはないな。細工の話を流してアサシンとアーチャーをぶつけると、逆に難易度が上がりそうだ」
「アーチャーからライダーは敵視されているみたいだからね。混戦に持ち込んだ場合でも危険は高い」

 成功する可能性はどれもゼロではない。しかし固い策とは言い難い。もちろん三人とも分かってはいるのだ。彼らの陣営にとって最も重要な存在がこちらの手元にある事を。

「最悪の場合、こちらで強制契約書の用意も可能だ。だがあくまでも最終手段と考えてくれ。相手は複数だ。裏をかかれる可能性も少なくない。僕の養子なら、きっとその手の対策も仕込んでいるだろうしね」
「貴様の技能はおそらく全て奴に見通されている、そう考えるべきか」
「だよな。だから未来から来たアイツに手の内がばれていない方法を――――未来、か。そうだ。ライダー!」

 何かを思いついたのかウェイバーはライダーに対し次々と質問を浴びせかける。そうして得られた情報から新たな切り札を彼らは一枚得ることに成功した。彼らはその後半日を費やし夜への決戦へとその身を投じることになる。


                   ×        ×
 

「舞弥、そちらの準備は万全か?」
『はい、滞りなく。しかしやはり目標は帰還していないようです』
「それでも構わない」
『了解。では、いつでもどうぞ』

 闇夜に溶け込むコートを風になびかせ、切嗣は指定場所に待機させていた舞弥と最終確認を行う。自身はウェイバーと共に戦車の荷台で構えている。

「ライダー、ウェイバー、君たちが要だ。僕らの命、預けるぞ」
「あぁこのイスカンダルに任せておけ」
「アンタこそその花火ってやつ失敗するなよ」
「勿論だ。では始めるぞ」

 そう言った切嗣は手に持った携帯電話でとある番号を打ち込む。その着信先はC4プラスチック爆弾へと接続されたポケットベル。夜の静寂を引き裂くのは、着信音ではなく数多の断末魔。

「ほ、ホテルが、えっ!!? ホテルが崩れた!? おい、これはいくらなんでも……」
「敵の工房を潰すのに何の容赦が必要だ? 宿泊客の避難は確認済みだ。神秘も絡んでいないから教会も手を出せない」
「うむ、問題ないな。何とも景気の良い狼煙ではないか! まぁ少し勿体ないがのぅ」

 崩れ落ちる瓦礫の弾幕、巻き上がる粉じんの渦。冬木ハイアットホテルがあった場所に今あるのはそれだけだ。

「問題大ありだっ、この馬鹿ぁ!! アンタもやり過ぎだっ! でもあのマンションからもかなり近いし、この光景は見えるはず。行くなら今しかない。駆け抜けるぞライダー!」
「応、だが待て。魔術師よ、急に手を抑えてどうしたのだ」

 斜め上の事態に半ば常識を投げ捨てたウェイバーであったが、ライダーの指摘で隣の切嗣の様子がおかしい事に気が付く。現象は一目了然だった。しかし理屈がわからない。二人以上に切嗣はもっと戸惑っていた。

「何で……また令呪が僕の手に!?」

 痛みと共にその手に再び刻まれたのは覚悟の証。世界を救う一画の光であった。

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